ケース開発
CASE DEVELOPMENT

本プログラムは、基本的に座学+ケーススタディで授業を進めます。
本プログラムの新設4科目(「地域包括ケアと医療経営」「ソーシャルマネジメント」「医療機関事業承継」「医療機関事例研究」)で取り扱うケースの概要は以下のとおりです。

ソーシャル・マネジメント

医療現場のネットワーク化 ~株式会社パソネット~

医療現場では、画像や検査結果等の大量のデータをデジタル化することによって業務時間の短縮や作業効率の向上が図られている。株式会社パソネットは、医療機関と病理診断の専門家をつなぐ仕組みを構築し、小規模医療機関で最先端の病理診断技術を提供することを可能にしている。株式会社パソネットは医療ベンチャーとして設立されてまだ歴史が浅いが、提供するサービスの質に企業の強みがあります。その強みを維持するために不可欠な病理医の確保、その強みを理解し利用してくれる医療機関の獲得が急務となっている。このケースでは、価格競争力がシェア獲得の重要な要因である画像診断の市場において、価格以外の新たな価値を提供し、医療機関の様々な困難を解消するサービス・プロバイダーとしてのポジションを確立するための経営戦略を議論する。また、病理医不足に悩む国内外の地域を市場と捉え、ソーシャル・ビジネスとしての役割についても考察する。

非営利組織におけるアントレプレナーシップ ~医療法人ホスピィー~

高齢化や人口減少が進む日本において医療機関が担う役割はますます多様になり、かつその重要性は高まっている。医療機関は、通常の保険診療に留まらず、人々の健康維持・増進の支援や予防医療の啓蒙、ライフスタイルの提案などにも活動の幅を広げている。医療法人ホスピィーは、過疎化と高齢化が進む富山県で、医療保険・介護保険サービスを中核として、運動、癒し、食に関連したサービスの提供を通じてQOLを高めるサービスを提供している。理事長のアントレプレナーシップのもと、事業拡大を続けているが、そのスピードに組織体制の構築が伴っていないという課題を持っている。さらなる事業拡大として、金沢エリアへの参入を目前にし、人材育成と組織改革の必要に迫られている。本ケースでは、地域密着型医療法人が着実な成長を遂げるために必要な組織内部の改革と、地方の医療機関の地域における役割について議論する。

田中消化器科クリニック ~「感動を呼ぶクリニック」を作り上げるために~

田中消化器科クリニック(静岡県静岡市)は、静岡駅から車で約 5分の住宅街にある胃・ 大腸内視鏡検査(胃・大腸カメラ)を中心に医療を行っている消化器科専門の無床クリニックである。消化器科領域に特化し、内視鏡専門クリニックとして早期から電子カメラや ITを駆使した先進的な経営を行ってきた。また、開業当初から「感動を呼ぶクリニック」 を理念に掲げ、患者に対する質の高いホルピタリティを追求し続けている。
本ケースでは、クリニックにおける顧客満足と従業員満足の連鎖、サービス・プロフィット・チェーンの実践例からクリニックの成長に重要な組織マネジメントを議論する。

医療法人ホスピィー ~医療法人のソーシャルマーケティングと市場開拓(浦田クリニック/スコール金沢)~

医療法人ホスピィーは、過疎化と高齢化の2つの特徴を持つ典型的な地方都市における地域密着型医療法人として、医療介護のワンストップサービスを実現しただけでなく、当法人が中心となり魚津市における地域コミュニティを形成するまでに発展している。急速な勢いで発展を遂げてきた当法人だが、次なる成長戦略として、金沢市への進出および大型施設のオープンという意思決定を行った。本ケースを通じ①ホスピィーが人口もあり洗練された文化を持つ金沢という、魚津とは大きく異なる市場に進出するにあたっての戦略および法人が抱える課題、そして②ホスピィーが担う地域コミュニティの役割について考察していく。

恵寿総合病院 ~地域社会にとって質の高いバリアフリーのサービスとは~

恵寿総合病院は、石川県七尾市にある病床数 426床を持つ総合病院であり、1934年に現理 事長神野正博氏の祖父に当たる神野正隣氏が設立した、神野病院に端を発する。その後、 1967年に神野病院二代目病院長、神野正一氏が医療法人財団董仙会を設立し、さらに1982 年に恵寿総合病院に改称した。1995 年、神野正博氏が医療法人財団董仙会の二代目理事長 に就任した。 2008年には全国 9番目の社会医療法人として認可され、社会医療法人財団董仙会恵寿総 合病院に改称した。また、2011 年には神野正博氏が社会福祉法人徳充会第二代理事長に就 任した。恵寿総合病院は 2013年に創立 80周年を迎えた。 2016年4 月 1日現在、病床数 426床(一般病棟282 床、HCU10床、地域包括ケア病棟 47床、回復期リハビリテーション病棟47床、障害者病棟 40床)、職員数800名、24の診 療科を持つ能登地域の中核医療施設である。医療、福祉、介護、保健をサポートする「け いじゅヘルスケアシステム」を構築し、地域包括ケアシステムiiの中心的な役割を果たして いる。2016年には、ワンストップで提供する革新的モデルとして「“恵寿式”地域包括ヘル スケアサービス」は第1回日本サービス大賞総務大臣賞を受賞している。本ケースでは、同病院の事業展開過程を観察し、地方の地域医療を担う組織が抱える諸問題とその解決策について考察することをねらいとする。

地域包括ケアシステムの東近江地域モデル ~三方よし研究会と近江兄弟社グループ~

滋賀県東近江医療圏は、東近江市、近江八幡市、日野町、竜王町からなる人口約 23 万人の 地方都市型二次医療圏である。圏域では切れ目のない患者中心の医療・保健・福祉・介護を提供する地域社会の体制づくりが進められており、特に、「患者よし」「機関よし」「地域よし」の三方よし研究会(東近江地域医療連携ネットワーク研究会)による連携体制が非常に特徴的である。病院および診療所、介護福祉施設など医療機関それぞれの機能分担が明確になされており、一丸となることで切れ目のない医療サービスを実現している。今では地域包括ケアの先進地とも評されるようになった。当該エリアでの地域ぐるみの自発的かつ継続的な取り組みは高い注目を集め、近年全国で進められつつある多職種連携のモデルケースにもなっており、日本 全国からの視察が相次いでいる。公益財団法人近江兄弟社ヴォーリズ記念病院はこの医療圏における超急性期病院の後方支援や、高齢で慢性疾患を持つ患者への一般診療、レスパイト・ケアを含めた在宅療養支援、そして県内でも数少ないホスピス医療といった機能をミッションとして幅広い役割を担っている。東近江医療圏域の近江八幡市に拠点を構える当法人は、病院を核にして同敷地内に老健センター、ケアハウス信愛館その他各種の在宅介護サービス事業を併設した「ヴォーリズ医療・保健・福祉の里」を運営している。各機能を有機的に連携させ、高齢者へのシームレスなケアを総合的に提供しているほか、住み慣れた地域や家庭で日常生活が営めるよう在宅医療にも積 極的に取り組んでいる。
本ケースでは、三方よし研究会およびヴォーリズ記念病院の取り組みを通じ、病院と地域社会との関わりや各ステークホルダーの期待される役割、および地域医療を担う開業医・介護事業所などとの地域内多職種連携の様子を取り上げる。

奈良県吉野郡吉野町

奈良県吉野郡吉野町は、吉野山を含む「紀伊山地の霊場と参詣道」が世界遺産に登録されている地域であり、吉野杉、吉野葛などの名産品や歴史建造物等の観光資源を有している。しかし、少子高齢化や人口減少、空き家、伝統工芸の継承といった解決すべき課題が山積している。このような状況は、過疎化が進む地域の共通課題である。そのような背景の中で、吉野町は総務省平成30年度シェアリングエコノミー活用推進事業の採択を契機に、シェアリングエコノミーを活用した地域の課題解決に取り組んでいる。その結果、住民同士、あるいは住民と旅人の間にシェアの関係が生まれ、地域活性化と関係人口の増加をもたらすなどの成果が見られている。人は何をシェアしているのか、そのシェアを動機付ける要因は何なのだろうか。本ケースでは、町長、役場職員、町議会議員、地域住民、地域おこし協力隊、移住者、旅人へのインタビューと現地取材をもとに、行政と住民の協働のまちづくりについて学ぶ。